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ハイブランドの歴史 Kering(ケリング編)|GUCCI(グッチ)を復活させた哲学とは

GUCCI(グッチ)、SAINT LAURENT(サンローラン)、BALENCIAGA(バレンシアガ)。
これらの世界的なブランドには、ある共通点があります。それは、いずれも「Kering(ケリング)」という巨大なグループに所属しているという点です。

私たちは日々これらのブランドが生み出す商品に心を奪われますが、その裏側にある成長の物語、特に一度は低迷したGUCCI(グッチ)がどうやって劇的な復活を遂げたのかを知る人は少ないでしょう。

その答えの鍵を握るのが、親会社であるKering(ケリング)が持つ独自の経営哲学です。

ライバルであるLVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)とは異なるアプローチで、ブランドの価値を見出し、才能あるクリエイターに大胆な権限を与えることで、奇跡的な成功を生み出してきました。

この記事では、フランスの一木材会社から世界有数のラグジュアリー帝国へと変貌を遂げたKering(ケリング)の歴史を紐解き、その成功の核心に迫ります。
ブランドの本質を理解することは、あなたのキャリア戦略を考える上で、間違いなく強力な武器となるはずです。

Kering(ケリング)とは?歴史とプロフィール、LVMHとの違いを解説

Kering(ケリング)とは?歴史とプロフィール、LVMHとの違いを解説

ファッション業界に少しでも関心があれば、LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)と並び称される巨大グループ、Kering(ケリング)の名を一度は耳にしたことがあるでしょう。

しかし、その実態や歴史、そしてライバルとの違いまでを正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。
まずは、この巨大ラグジュアリー帝国の基本情報から見ていきましょう。

創業者フランソワピノーと現在の経営体制

Kering(ケリング)の物語は、一人の非常に野心的なフランス人実業家から始まります。
創業者であるフランソワ・ピノーは、1962年にフランス・ブルターニュ地方で木材の取引会社を設立しました。

これが、後の巨大コングロマリット(複合企業)の原点です。
彼は卓越した経営手腕とM&A戦略を駆使し、フランスの百貨店プランタンや通信販売会社ラ・ルドゥートなどを次々と買収。

事業を多角化し、PPR(ピノー・プランタン・ルドゥート)という一大流通グループを築き上げました。
そして2005年、経営のバトンは息子のフランソワ=アンリ・ピノーに引き継がれます。

彼は父が築いた土台の上で、より大胆な変革を実行します。

それは、流通・小売事業を次々と売却し、経営資源をラグジュアリー部門に集中させるという戦略でした。
現在のKering(ケリング)の姿は、このフランソワ=アンリ・ピノーの先見性と決断力によって形作られたのです。

数字で見る企業規模と所属ブランド一覧

現在のKering(ケリング)は、世界中に約49,000人の従業員を擁し、2023年度の売上収益が196億ユーロ(約3兆円)に達する、世界第2位のラグジュアリーグループです。

その傘下には、ファッション、レザーグッズ、ジュエリー、ウォッチの各分野で世界的に有名なブランドが名を連ねています。

カテゴリー主な所属ブランド
ファッション&レザーグッズGUCCI(グッチ)、SAINT LAURENT(サンローラン)、BOTTEGA VENETA(ボッテガ・ヴェネタ)、BALENCIAGA(バレンシアガ)、ALEXANDER McQUEEN(アレキサンダー・マックイーン)、BRIONI(ブリオーニ)
ジュエリーBOUCHERON(ブシュロン)、POMELLATO(ポメラート)、DO DO(ドド)、Qeelin(キーリン)
ウォッチULYSSE NARDIN(ユリス・ナルダン)※、GIRARD-PERREGAUX(ジラール・ペルゴ)※
アイウェアKering Eyewear(ケリング アイウェア)

※ウォッチ部門の2ブランドは2022年に売却されましたが、ケリングの歴史を語る上で重要なブランドです。

創造性の力を信じるKering(ケリング)の哲学

Kering(ケリング)の経営哲学の核心は、「想像力を解き放つ(Empowering Imagination)」という言葉に集約されます。

これは、傘下にある各ブランドのクリエイティブな才能を心から信じ、デザイナーに最大限の自由と裁量権を与えるという考え方です。
彼らは、ブランドの歴史や伝統をただ守るのではなく、現代を代表するクリエイターの視点を通して「再解釈」し、時には破壊することさえも許容します。

この大胆なアプローチこそが、一度は古くなったイメージのあったブランドを、時代を象徴する最もクールな存在へと生まれ変わらせる原動力となっているのです。

ライバルLVMHとの経営戦略の根本的な違い

ラグジュアリー業界のもう一つの巨人、LVMHと比較すると、Kering(ケリング)の独自性はさらに際立ちます。
両者は目指す方向性やブランドのマネジメント手法において、対照的なアプローチを取っています。

比較項目Kering(ケリング)LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)
ブランド戦略クリエイターの個性を尊重し、ブランドを大胆に変革させる伝統や格式を重んじ、ブランドイメージを緻密に管理・向上させる
組織構造各ブランドの独立性を重んじ、CEOやデザイナーに大きな権限を与えるグループ全体でのシナジーを重視し、統一された経営手法を導入
ブランドの個性エッジが効いており、トレンドを創出するアバンギャルドなブランドが多い時代を超えた普遍的な価値を持つ、オーセンティックなブランドが多い
クリエイターの役割ブランドの変革者
(例:アレッサンドロ・ミケーレ)
ブランドの継承者
(例:キム・ジョーンズ)

LVMHは、LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)に代表されるように、各ブランドが持つ伝統的な価値を大切に守り、育てることを得意としています。

一方、Kering(ケリング)は、クリエイターの力によってブランドを大胆に生まれ変わらせ、新しい価値を創り出すことに強みがあると言えるでしょう。

この根本的な違いを理解することが、Kering(ケリング)の歴史を読み解く上で非常に重要になります。

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Kering(ケリング)の歴史|木材会社からラグジュアリー帝国へ

Kering(ケリング)の歴史|木材会社からラグジュアリー帝国へ

現在、世界最高峰のラグジュアリーグループとして知られるKering(ケリング)ですが、その出発点はファッションとは全く無縁の、フランスの地方の小さな木材会社でした。

創業者フランソワ・ピノーの野心と、その息子による大胆な事業転換が、この巨大帝国を築き上げたのです。

創業期|流通小売業としての拡大

Kering(ケリング)の歴史は、1963年にフランソワ・ピノーがフランス西部のブルターニュ地方で木材会社「ピノー社」を設立したことから始まります。

彼は、倒産寸前の企業を安く買い取り、経営を立て直して売却するという手法で次々と事業を拡大。その並外れたM&Aの手腕で、フランスの経済界で頭角を現していきました。

1990年代に入ると、ピノーの目は小売業界へと向かいます。

彼はフランスの老舗百貨店Printemps(プランタン)や、通信販売大手のLa Redoute(ラ・ルドゥート)などを買収していきました。

これらの頭文字を取り、企業グループはPPR(ピノー・プランタン・ルドゥート)と名付けられました。

この時点でPPRは、ファッションとは直接関係のない、巨大な流通・小売コングロマリット(複合企業)でした。

転換期|GUCCI(グッチ)グループ買収とラグジュアリーへの舵

PPRの運命を、そして世界のラグジュアリー業界の勢力図を大きく変える転機が訪れたのは1999年のことでした。
当時、経営不振に喘いでいたGUCCI(グッチ)グループに対し、ライバルのLVMHが敵対的買収を仕掛けます。

GUCCI(グッチ)の経営陣は、LVMHの支配を避けるため、友好的な買収者としてPPRに助けを求めました。
ここから、両グループによる壮絶なGUCCI(グッチ)争奪戦が繰り広げられます。

最終的に、フランソワ・ピノーの巧みな交渉術が功を奏し、PPRはGUCCI(グッチ)グループの株式の42%を取得。
LVMHを退けることに成功しました。
この買収は、PPRにとって投資以上の意味を持っていました。

GUCCI(グッチ)だけでなく、その傘下にあったYVES SAINT LAURENT(イヴ・サンローラン)も同時に手に入れたことで、PPRは初めてラグジュアリービジネスの核心に触れることになったのです。

この出来事が、後のラグジュアリー帝国への壮大な舵切りへと繋がっていきます。

成長期|PPRからKering(ケリング)へ 社名変更に込めた想い

2005年、創業者フランソワ・ピノーは、息子のフランソワ=アンリ・ピノーにCEOの座を譲ります。
父から巨大グループを受け継いだ彼は、より大胆な未来を見据えていました。

それは、百貨店や通販、木材といった祖業とも言える事業を次々と売却し、グループの経営資源を「ラグジュアリー」と「スポーツ&ライフスタイル」の二つの分野に完全に集中させるという、大きな決断でした。

そして2013年、この大規模な事業再編の総仕上げとして、グループ名をPPRからKering(ケリング)に変更します。この新しい社名には、二つの深い意味が込められていました。

  1. 発音が同じ「Caring(ケアリング)」には、ブランドや人を「気遣う」という想いを。
  2. 創業の地ブルターニュの言葉「Ker(カー)」には、「家」や「拠点」という意味を。

つまりKering(ケリング)という名前は、グループが大切にする価値観と、そのルーツへの敬意を示しているのです。

Kering(ケリング)流ブランド再生術|GUCCI(グッチ)復活の物語

Kering(ケリング)流ブランド再生術|GUCCI(グッチ)復活の物語

Kering(ケリング)の名を世界に轟かせた最大の功績は、何と言ってもGUCCI(グッチ)の劇的な復活劇でしょう。

一度はブランドイメージが低迷し、時代遅れの存在になりかけたGUCCI(グッチ)を、二度にわたって現代のファッションシーンの頂点へと返り咲かせたその手腕は、Kering(ケリング)そのものを体現しています。

トム・フォード時代 低迷からの劇的な復活

1990年代初頭、GUCCI(グッチ)は創業家のお家騒動やライセンスの乱発により、ブランド価値が大きく損なわれていました。

そんな危機的状況を救うべく、当時無名のデザイナーであったトム・フォードがクリエイティブ・ディレクターに大抜擢されます。

彼は、GUCCI(グッチ)の伝統的なイメージを根底から覆す、セクシーでグラマラスな新しいビジョンを打ち出しました
シルクのシャツの胸元を大胆に開き、光沢のあるベルベットのパンツを合わせる。

彼の挑発的なスタイルは、瞬く間に世界中のセレブリティやファッショニスタを虜にし、GUCCI(グッチ)の売上は爆発的に増加。
トム・フォードは、わずか数年でブランドを完全復活させた救世主となったのです。

アレッサンドロミケーレが世界を熱狂させた新しいGUCCI(グッチ)の世界

トム・フォード退任後、フリーダ・ジャンニーニの時代を経て、GUCCI(グッチ)は再び成長の壁に直面します。
この状況を打破するため、フランソワ=アンリ・ピノーは2015年、またしても大胆な賭けに出ます。

当時、GUCCI(グッチ)のアクセサリー部門で長年働いていた、無名のデザイナー、アレッサンドロ・ミケーレをクリエイティブ・ディレクターに指名したのです。

ミケーレが創り出したのは、それまでのGUCCI(グッチ)のイメージとは全く異なる、極めて装飾的で、ジェンダーレス、そしてヴィンテージ感あふれるロマンティックな世界観でした。

ヘビやトラ、花々が刺繍された色鮮やかなウェア、レトロな雰囲気のロゴTシャツ。
彼の折衷的で唯一無二のデザインは、ミレニアル世代を中心に熱狂的な支持を集め、「ギークシック」という新しいトレンドを生み出しました。

その結果、GUCCI(グッチ)の売上は再び驚異的な成長を遂げ、ファッション業界における絶対的な地位を不動のものとしたのです。

ブランドの本質を見抜き才能に投資するケリングの手法

この二度の復活劇から見えてくるのは、Kering(ケリング)流のブランド再生術の核心です。

1. 過去の成功体験や伝統に固執せず、ブランドが直面している課題を直視する。
2. 知名度や実績ではなく、未来の可能性を秘めたデザイナーの才能を見抜き、大抜擢する。
3. 一度任せると決めたら、経営陣は口を出さず、デザイナーが思い描く世界観を100%表現できる環境を整える。

これは、ブランドのDNAを大切に守り育てるLVMHとは対照的なアプローチです。
Kering(ケリング)は、ブランドの本質(DNA)は不変であるとしつつも、その表現方法は時代に合わせて大胆に変えるべきだと考えています。

この「ブランドが持つ本来の魅力を、現代の視点から捉え直して表現する」こそが、ブランドを常に現代的で刺激的な存在に保ち続ける秘訣なのです。

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SAINT LAURENT(サンローラン)とBALENCIAGA(バレンシアガ)の躍進

SAINT LAURENT(サンローラン)とBALENCIAGA(バレンシアガ)の躍進

GUCCI(グッチ)の成功で証明されたKering(ケリング)流のブランド再生術は、他のブランドにおいても大きな成果を上げています。

特に、SAINT LAURENT(サンローラン)とBALENCIAGA(バレンシアガ)の目覚ましい躍進は、その哲学の正しさを物語っています。

SAINT LAURENT(サンローラン)|エディ・スリマンによるロックな反逆

2012年、Kering(ケリング)はエディ・スリマンをイヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターに迎え入れます。
彼は就任するやいなや、ブランド名を「イヴ・サンローラン」から「サンローラン・パリ」へと変更。

さらに、創業者イヴが築き上げた優雅でエレガントなイメージを刷新し、黒を基調とした、極めてタイトでロックなスタイルを打ち出しました。
この大胆な改革は、当初、長年のブランドのファンやファッション評論家から大きな反発を受けました。

しかし、彼のブレない美学と現代的な感覚は、新しい世代の顧客の心を掴み、商業的に大成功を収めます。

Kering(ケリング)は、批判を恐れずエディ・スリマンのビジョンを支持し続けたことで、SAINT LAURENT(サンローラン)を再びファッションの最前線に押し上げたのです。

BALENCIAGA(バレンシアガ)|デムナ・ヴァザリアが仕掛けたラグジュアリー革命

2015年、BALENCIAGA(バレンシアガ)のアーティスティック・ディレクターに指名されたのは、当時ストリートファッションシーンで絶大な人気を誇っていたブランド「ヴェトモン」のヘッドデザイナー、デムナ・ヴァザリア(現デムナ)でした。

彼は、創業者のクリストバル・バレンシアガが築いたオートクチュールの伝統を尊重しつつ、そこに現代のストリートカルチャーや日常的な要素を大胆にミックス。

高級ショッピングバッグそっくりのレザーバッグや、オーバーサイズのパーカー、ボリュームのあるスニーカー「トリプルS」など、彼の生み出すアイテムは次々と世界的ヒットを記録しました。

デムナは、「ラグジュアリーとは何か?」という既成概念そのものを問い直すことで、BALENCIAGA(バレンシアガ)を最も革新的で話題性のあるブランドへと変貌させたのです。

各ブランドの独立性を重んじるケリングの哲学

SAINT LAURENT(サンローラン)とBALENCIAGA(バレンシアガ)の成功事例は、Kering(ケリング)が一貫して各ブランドの個性と独立性を最大限に尊重していることの証明です。

GUCCI(グッチ)のロマンティックな世界観、SAINT LAURENT(サンローラン)のロックな美学、BALENCIAGA(バレンシアガ)のストリート感覚は全て、Kering(ケリング)という一つのグループに属しながらも、全く異なる個性と魅力を放っています。

Kering(ケリング)は、グループ全体で一つのイメージを押し付けるのではなく、それぞれのブランドが持つ独自の歴史とDNAを深く理解し、それを現代のクリエイターの力でどう輝かせるか、という視点を最も大切にしています。

この多様性を許容し、それぞれの創造性に力を与える姿勢こそが、グループ全体の強さに繋がっているのです。

Kering(ケリング)が描く未来のラグジュアリーとサステナビリティ

Kering(ケリング)が描く未来のラグジュアリーとサステナビリティ

Kering(ケリング)の哲学を理解する上で、クリエイターの才能への信頼と同じくらい重要なのが、サステナビリティへの強いコミットメントです。

CEOのフランソワ=アンリ・ピノーのリーダーシップのもと、Kering(ケリング)は業界の他のどのグループよりも早くからこの課題に真剣に取り組んできました。

彼らにとって、サステナビリティは未来のラグジュアリーを創造するための核となる経営戦略なのです。

なぜKering(ケリング)はサステナビリティを重視するのか

Kering(ケリング)がサステナビリティを重視する理由は、倫理的な観点だけではありません。そこには、極めて戦略的なビジネス上の判断があります。

第一に、将来的なリスクへの備えです。最高品質のレザー、カシミヤ、コットンといった天然素材は、ラグジュアリービジネスの生命線です。

しかし、気候変動や生物多様性の喪失は、これらの貴重な資源の安定供給を脅かしています。
今のうちから環境負荷の少ない方法で資源を調達し、サプライチェーン全体を管理することは、ブランドの未来を守るために不可欠なのです。

第二に、現代におけるブランド価値の向上です。
現代の顧客、特にミレニアル世代やZ世代は、その製品がどのような背景で作られたのか、ブランドがどのような価値観を持っているのかを重視します。

環境や社会に配慮したブランドであることは、顧客からの信頼と共感を得て、長期的な関係を築く上で強力な要素となります。

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環境への影響をお金で見える化する革新的な取り組み

Kering(ケリング)のサステナビリティへの本気度を象徴するのが、独自に開発した「環境損益計算」という画期的なツールです。

これは、サプライチェーン全体、つまり製品がお客様の手に届くまでの全工程で環境に与えた負荷を、金銭的価値(ユーロ)に換算して「見える化」する仕組みです。

【サプライチェーンの各段階と環境負荷の例】

原材料の生産:綿花の栽培に必要な水の使用量、家畜の飼育に伴う温室効果ガスの排出
素材の加工: レザーのなめし工程で生じる水質汚染、染色のためのエネルギー消費
製品の製造: 工場の稼働による電力使用、製品の輸送
店舗運営など: ブティックの照明や空調、製品の廃棄

これらの環境負荷を「お金」という誰もが理解できる共通の指標で示すことで、デザイナーや製品開発チームは、よりサステナブルな意思決定を下しやすくなります。

例えば、「このレザーを使うと環境コストは〇〇ユーロ、こちらの代替素材なら△△ユーロ」というように、環境への影響を誰もが理解できる「お金」という指標で示すことで、デザイナーや製品開発チームは、よりサステナブルな意思決定を下しやすくなります。

このEP&Lを他社も使えるようにオープンソースとして公開している点も、Kering(ケリング)の先進性を物語っています。
自社だけでなく、ラグジュアリー業界全体をより良い方向へ導こうという、強いリーダーシップの表れと言えるでしょう。

これからの時代に働く上で必須となる視点

Kering(ケリング)がこれほどまでにサステナビリティを重視するという事実は、これから同グループで働くことを目指す人にとって、とても重要な意味を持ちます。

もはや、サステナビリティは特定の部門だけの仕事ではありません。
デザイナーは環境負荷の少ない素材を選ぶ知識が、マーチャンダイザーは製品のライフサイクル全体を考える視点が、そして販売スタッフは、製品の背景にあるサステナブルな物語をお客様に伝える力が求められます。

Kering(ケリング)の歴史やブランドの美学を理解することに加えて、このサステナビリティという未来への哲学に共感し、自分自身の仕事の中でどう貢献できるかを考える視点を持つこと。

それこそが、これからのラグジュアリー業界で活躍するために不可欠な資質であり、Kering(ケリング)が真に求める人物像と言えるでしょう。

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Kering(ケリング)への転職で経験をどう語るべき?

Kering(ケリング)への転職で経験をどう語るべき?

ここまで見てきたKering(ケリング)の歴史と哲学は、同グループへの転職を成功させるための具体的なヒントに満ちています。
面接や書類で何をアピールすべきか、3つのポイントに絞って解説します。

①「課題解決能力」を具体的に示す

GUCCI(グッチ)の復活劇が示すように、Kering(ケリング)は現状維持ではなく、常に変革を求めます。

自分の職務経歴を振り返り、「前例のない課題に対し、自ら考えてこう行動し、このような結果を出した」というエピソードを準備しましょう。
「売上が落ちていたカテゴリで、〇〇を企画して前年比120%を達成した」など、主体的な行動が伝わる具体的な実績が有効です。

②クリエイションへの敬意と共感を語る

デザイナーの才能を信じるKering(ケリング)では、スタッフにもクリエイションへの深い理解が求められます。

販売職であれば、「デザイナーの〇〇という想いに共感し、その背景をお伝えすることでお客様に商品の価値をより深く感じていただけた」といった経験を語ることで、ただの販売員ではないことをアピールできます。

③サステナビリティへの貢献意欲を伝える

Kering(ケリング)が業界をリードするサステナビリティへの取り組みは、重要なアピールポイントです。

「現職で廃棄ロスを減らすために〇〇を提案した」「環境配慮型素材について学び、接客に活かしている」など、自身の業務とサステナビリティを結びつけられると、ブランドの未来に貢献できる人材として高く評価されるでしょう。

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まとめ|Kering(ケリング)の歴史に学ぶこれからのキャリア戦略

まとめ|Kering(ケリング)の歴史に学ぶこれからのキャリア戦略

フランスの木材会社から世界的なラグジュアリー帝国へ。Kering(ケリング)の歴史の核心には、「想像力を解き放つ」という一貫した哲学があります。

GUCCI(グッチ)を二度にわたり復活させ、SAINT LAURENT(サンローラン)やBALENCIAGA(バレンシアガ)を時代の最前線に押し上げたその手腕は、クリエイターの才能を信じ、大胆な権限を与えることで成し遂げられました。

Kering(ケリング)の歴史は、伝統を守るだけでなく、現代の視点でその価値を捉え直し、新しい魅力を生み出すことの大切さを教えてくれます。
この考え方は、ラグジュアリー業界で働く上で、あなたの大きな強みとなるでしょう。

もし、ご自身のキャリア戦略をより深く考えたいと感じたら、ぜひ一度私たちアプライムにご相談ください。プロの視点から、あなたの挑戦をサポートします。

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